#12 電車の区分方法について(内装による区分編)

 こんにちは。今回は、電車の区分方法(内装による区分編)をお送りします。「電車の“クハ”って何?」という話題や、「E233ってなんぞ」という話題にも触れる予定です。

 

※この話題は2回に分けて公開しています。前回は電気系統、今回は車両の設計面での区分となります。

 

⑵電車には大きく分けて5種類ある(内装編)

 電車等問わず、気動車ディーゼル車)でも同じことが言えます。その5つとは

 ・通勤型

 ・近郊型

 ・急行型

 ・特急型

 ・一般形

 

です。順番に見ていきましょう。

 

通勤型電車103系205系京王9000系など)

…基本的に鉄道というものは、

 ⑴人口や物流の中心都市などの2つ以上の都市を結ぶ

 ⑵移動が困難な難所で、需要が見込める箇所

に敷設されることが殆どです。鉄道技術が未熟な時代では、基本的に⑴のネットワークが形成されます。その時にいきなり特急列車を走らせることはしないでしょう。一度に大量に輸送できた方が運航コストを黒字にしやすいです。なので、通勤型電車はすべての鉄道車両の祖先とも言えます

大都市圏の通勤電車を想像していただければわかりやすいかと思いますが、とにかくドアが多いです。1,2分という短い間で、多くの乗客を乗降させなければなりません。そのためには「ドアを増やす」か、「ドアの幅を広げる」二つの方法があります。前者を採用した事例は以下の通りです(一部のみです)。

⑴3ドア→4ドアへ

京急電鉄700形(一部は高松琴平電鉄に譲渡)

京急電鉄800形

 

⑵3ドア→5ドアへ

京阪5000系

東京メトロ03系

東武鉄道20000系

 

⑶4ドア→5ドアへ

京王電鉄6000系(一部編成を除き、後に4ドアに改造された。)

 

⑷4ドア→6ドアへ

JR東日本205系(山手線,埼京線,横浜線など)

JR東日本209系

JR東日本E231系(一般形に分類。通勤タイプのみ。)

東急電鉄5000系

しかし、なぜ最近はドア数を増やした車両が減ってきたのでしょうか。メンテナンスが難しいという事もありますが、一番の理由は「ホームドアの設置」があります。多扉車のために複雑な構造のホームドアを設置するよりも、すべての車両を統一した方がホームドアの導入コストを抑えることができます。また、鉄道ネットワークが拡大したことや、車両の増結、列車の増発が行われたことにより、混雑が分散し、多扉車を導入するメリットがなくなったこともあるでしょう。

(※多扉車を置き換えた車両には、多扉車の部品を流用する事例が多いです。)

 

後者の「ドア幅を広げる」というものは、多くの人は「両開き扉の開口幅を拡大させる」ことをイメージすると思いますが、昔は「片開きドアを両開きドアにする」こともドア幅を広げる一つの方法でした。

両開きドアの幅を拡大させる事例は、東京メトロ東西線小田急電鉄などで導入されています。

 

《余談 京浜急行の車両の話は以下のリンクをタップ》

※現在準備中です。

 

近郊型電車115系、211系、415系など)

…近郊というのは都市周辺のことを言います。鉄道でいう近郊形は、言い換えれば「中距離列車」です。また、都市圏内で完結する運用を「短距離列車」と呼び、遠く離れた2つの都市を結ぶ運用を「長距離列車」といいます。中距離列車のイメージでいえば、通勤五方面に数えられる「東海道本線」「中央本線」「高崎線」「宇都宮線東北本線)」「常磐線」などがあげられます。並行して各駅停車的ポジションをこなす京浜東北線中央総武線各駅停車は短距離列車に扱われます。

 とはいえ、通勤五方面を終点まで運用する列車は中距離ではなく長距離です。という事は、五方面の途中駅まで走る運用こそが中距離運用…というわけです。

 小田原、大月、前橋、宇都宮、水戸。いずれも東京都区内までは距離があります。この区間を通勤型の電車で運用するとどうなるでしょうか。車内の快適性は最低です。数時間横向きに座り、トイレもない。そんな状況では誰も電車を使ってくれません。というわけで、車内設備をややグレードアップします。大量輸送を行う必要はないので、定員は少なめ。前向きに座れる「クロスシート」や、一部分にそれを用いて、他はロングシート(横向きの座席)を組み合わせた「セミクロスシート」が採用されます。また、トイレが設置されることが多いです。昔は和式で線路に垂れ流ししていたところもありましたが、現在は洋式で、汚物タンクも設置されています。一部はバリアフリーに対応しているものもあるそうです。

 しかし、最近は近郊形というくくりが消滅しつつあります。というのも、都市圏の拡大により郊外でも乗客が多いので、従来のクロスシート車などでは十分に対応できなくなっているのです。なので、一部車両はフルロングシート、一部はセミクロスシートなど、異なる座席の車両をうまく組み合わせた一般形列車(この後に記載しています)などが導入されています。

 

急行型電車165系など)

…こちらと④の特急型は、一般列車(追加料金不要の列車)とサービス面・時間面で優劣をつけ、追加料金を払って乗車してもらうタイプの列車です。座席を増やし、ドアは少なめです。ドア付近はデッキとして、客室は別で仕切られていることが多いです。寒さ&暑さ対策などが理由です。急行型は、ドアは片側に二つ、座席は固定されています。

 ※現在JR線には定期の急行列車はありません。特急に格上げされているか、快速などに格下げされてすべて廃止されています。

 

特急型電車485系E259系成田エクスプレスなど)

…急行型と内装はあまり変わりませんが、窓が開けられない、ドアは片側に一つだけ、座席がリクライニングできるなど、車内サービスの面で急行型と差をつけています。

 

一般型電車E231系、その他派生形式)

…比較的最近に登場した新しい区分です。通勤型と近郊型をまとめたようなものと考えていただければわかりやすいと思います。基本性能を定め、そこから派生させていく方式です。具体例は以下の通りです。

ⅰ E231系

…この形式は、試作車の900番台(登場時は209系950番台)、常磐線快速電車や武蔵野線の0番台、中央総武緩行線の500番台、地下鉄東西線直通用の800番台、近郊タイプの1000番台(厳密には細かい区分があるが、今回は省略)八高線川越線の3000番台が存在します。1000番台は近郊型、それ以外は通勤型です。1000番台にはグリーン車やトイレが設置されており、座席も一部車両はセミクロスシートです。それ以外の車両はロングシートで、トイレは設置されていません。

 通勤タイプも近郊タイプもパット見て大きな差はなさそうですが、以外と違います。一つはクラッシャブルゾーン。通勤タイプと比較して踏切の多い区間を走行することから、運転台の安全設計が強固になっています。そのため、乗務員室直後の座席は7人掛けではなく4人掛けになっています。もう一つは前照灯の位置。通勤タイプは基本的に尾灯と同じ位置にありますが、近郊タイプは上部の両端にあります。

 

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E231系近郊タイプ

 

 

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奥が205系「通勤型」電車。手前がE233系3000番台「近郊」タイプ。E231系近郊タイプから、運転席付近の安全装備が強固になった。

 

この形式は私鉄にも派生形式が存在しています(相模鉄道10000系や都営新宿線10-300形など)。また、新潟エリアを走行するE129系や東北エリアを走行するE721系は、E231系E233系をベースに設計・製造されています。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。電車の種類分けは奥深いです。普段目にしているものはごく一部に過ぎないのです。私も知らない形式はあります。これからも電車のネタを投稿する予定です。