こんにちは。今回は、犯罪心理学の理論「割れ窓理論」について簡単な説明をしようと思います。
⑴割れ窓理論とは
この理論の意味は、「目に見える軽いミスや欠陥を修正することで、大きな失敗を未然に防ぐことができる」というものです。初耳の方なら「は?」ってなると思うので、順を追って説明します。
割れ窓理論は、アメリカの心理学者ジョージ・ケリング博士が提唱しました。
廃墟など、建物のガラスが割れていることが稀にありますね。学校でもたまに悪ふざけで割ってしまうこともあります。そうした場合、雨の日などにガラスが割れっぱなしだと不都合が生じますので、普通は修理を行います。ただ、廃墟の場合は割られても放置されます。直して得をする人が存在しないからです。放置が続けば、「なるほど、ここは管理が行き届いていないんだな」と思うようになり、いたずらでどんどん窓ガラスを割られてしまい、結果として治安が悪化します。
街中の衛生環境でも例を挙げてみます。街中にゴミが落ちていたら、あなたはどうしますか?拾いますか?見過ごしますか?*1普通の人は見過ごすのではないでしょうか。酷い人*2はさらにポイ捨てしますね(俗に言う「他人もやってるしいいじゃん理論」)そんなことが続けば、街中はあっという間にゴミだらけ。
実はこの事例、ノンフィクションなんです。過去にニューヨークで起こっていたことなんです*3。こんな酷い有り様なので、治安は最悪に。一歩裏路地に入れば暴行・窃盗なんて当たり前。
こんな状況をどうすればいいのか。市長は考えます。ほとんどの人は「凶悪犯罪から優先取り締まるべき」と考えると思います。普通ならそうなります。「万引き犯と殺人犯どっちを先に処罰しますか?」と言われれば、殺人犯を処罰するのが先に決まってます。しかし市長は「軽犯罪を取り締まり、街のゴミをゼロにしよう」と言い出したのです。
皆さん、冷静に考えてください。犯罪が起こりやすい場所をイメージできますか?想像できる方はおそらく
・薄暗い
・人通りが少ない
・汚い
この三拍子は揃っていますよね?このような場所になるのには順序があって、
①街灯が切れ、薄暗いと人は寄り付かない
②人通りが減る
③監視の目が減る
④不法投棄が増える
⑤汚い場所になる
⑥モラルの低い人が集る
⑦治安が悪化する
という順になると思います。監視の目が届かなくなると、人は「バレなきゃOK」と言う気持ちになる生命体なので、悪いことをしたくなります。なので、何より「他の人に監視されている」と認識されることや、「管理が行き届いている」と言うことをワルへ伝えることが何より重要なのです。
そういうわけで、ニューヨーク市では地下鉄・バスの無賃乗車や建造物への落書きなどの軽い犯罪*4を徹底的に取り締まり、犯罪を起こしやすい雰囲気を無くしました。すると、犯罪は劇的に減り、治安が良くなった…らしいです。
⑵割れ窓理論の日常への利用
実はこの理論は日常的によく使われています。2つあるので紹介しようと思います。
成功した例
①トイレ
コンビニなどのトイレでも使われています。「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」と書かれているのを見たことはあるでしょうか?あれも実は割れ窓理論を利用したもので、殆どは「ここのトイレは普段からきれいに使う人がほとんどだから汚くしたらいけないな」という考えに自然となるのです*5。
②万引き対策の声かけ
声かけも万引き対策の一つです。要は、「この店は監視の目がある」「私は監視されている」という意識を植え付けさせます。そうなると必然的に万引きは減っていきます*6。流石に、他の人がいる前で万引き行為なんてできません。
成功したとは言えない例
①不法投棄
“不法投棄監視中”なんて看板、飽きるほど見ました。アレ、効果を発揮できているのはほんの一部で、あとはむしろ促進しちゃってます。「ここは不法投棄する人が多いから、俺も」的な思考になりがちなので、結果的に不法投棄は増えます。「監視カメラを設置しているから大丈夫ではないだろうか?」と言う意見の方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。先程も触れたように、「人の監視がある」というのはとても大きいです。地主の前で不法投棄できますか?普通ならできません。というように、警備員を巡回させる方がよっぽど効果的です。
不法投棄を減らすためには
やはり人の目による監視に尽きると思います。もう少し考えれば、捨てたことがわかりやすいように草木を刈って視界の開ける場所にするなど、改善の余地はたくさんあります。単に“監視カメラ作動中”では弱いです。誰かに見られているという意識がないです。なので、不法投棄を本気でなくしたいならこの二つの対策を取るべきではないでしょうか。
おまけ “否定の命令はしない”
否定の命令というのは、たとえば「座らないでください」が「座って下さい(命令)」+「否定」に分解できるように、命令分に否定が混ざることを指します。
なぜコレが良くないと言われるのか。それは「人間は、言われた言葉しかパッと想像できないから」なのです。勉強などで行き詰まった場合、「諦めるな」って普通言いますよね。でも、言われた側の脳内では“諦めている自分”が想像されています。「こうなりたくない」と思うのはまた別の段階で、アドバイスがダイレクトに伝わっていないことがお分かりいただけるでしょう。
ではどうすれば良いのか。結論は「肯定の命令に言い換える」という手法です。先程に例としてあげた「諦めるな」ですが、こちらは「もう少しだけ頑張ってみろ」など。そうすれば、頑張る自分が自然と想像されるようになります。
最後に
心理学のクソ講座をここまで読んでいただきありがとうございます。今後も気が向いたら紹介していこうと思います。